店長@田辺のカニ買い付け日記 in 北海道
突然ですが質問!
「ズワイガニやタラバガニ、毛ガニなど、いろんな種類のカニがありますが、一番好きなカニは何ですか?」
僕は福井県育ちなので、一番おいしいカニは?と聞かれると、もちろん越前蟹(ズワイガニ)と答えます。
ところが北海道では、毛ガニという答えが返ってきます。
当店のお客様でも「ズワイガニやタラバガニも旨いけど、カニミソは毛ガニが一番!」っという方も少なくありません。
それも、かなりカニを食べ慣れているグルメな方に、こういう傾向が強いんです。
確かに、僕自身も18歳でカニ屋で働き始めて17年間いろんなカニを食べ比べてきましたが、一級品の毛ガニのカニミソは、高級ブランドである越前蟹にも匹敵する濃厚なコクがあると思います。
ただ、北海道産の毛ガニと一括りに言っても、北海道は四国の4倍の大きさがあり、その海岸線沿いに毛ガニ産地がいくつもあり、それぞれ漁期もバラバラで品質が安定せず、結果的に身の詰まり具合や味覚にバラツキがでてしまいます。
その点、高級ブランドの越前蟹は、水揚げ後に港で厳重な選別工程があり、その規格をクリアした一級品のみに黄色いタグが付けられるので、いつ、どこで食べても大差のない品質に満足できるのです。
なんとか、当店のカニ通のグルメなお客様を唸らせるようなブランド越前蟹と肩を並べる一級品の毛蟹だけを仕入れて販売できないものかと調べた結果、オホーツク海に面する北海道の紋別に、こだわりの毛蟹工場があるという情報をキャッチしました!
どんなこだわりがあるかと言いますと…
◎漁場の限定
旨みたっぷりで身入りが安定している流氷海明けの時期(3月下旬から約1カ月ほど)
◎漁法の限定
鮮度が落ちる刺し網ではなく、カゴ漁の一級品限定
◎凍結方法の限定
旨みをギュッと閉じ込めるブライン急速凍結
エアーブラスト凍結に比べて水分の乾燥も少なく、凍結までの時間も短く品質劣化が少ない。
◎工場の限定
紋別指定工場にて限定生産
毛蟹の水揚げから高鮮度のまま工場に搬入し、ベテランの職人が手際良く製品化。
うーん、、、これはかなり期待できそうです!
そこまで聞いたら、実際に自分の目で確かめないと気が済まないのが、カニ職人のプライド!
いざ、北海道の紋別へ行ってみましょう~!










サロマ湖と白樺の木。いかにも北海道っていう感じですね~


温泉に入ってから至福のひととき♪早く寝ないといけないんですけど、ビールが進みます…



とりあえず出港!


1隻だけ漁に行って、残りの船は行かないとかいうのはなく、すべて一緒に行動します。
漁場まで1時間ほどあるので、船室に入ってしばし仮眠…。

「やっぱダメだわ。港に引き返す。」と漁師さん。
毛カニ漁の船は10トンほどでそれほど大きくなく、船の横からカゴを引き上げながら漁をするので、波が高いと転覆の危険があるのです。

他の船も、次々と帰港してきます。




ホテルに帰って2時間ほど仮眠して起きてみると…

あいにくの天候で毛ガニ漁はなかったのですが、
前日にイケスに入れておいてくれたので加工場は予定通り視察できるとのこと。
紋別港のすぐ近くにあるニチモウ株式会社さんの紋別工場へ。


紋別の毛ガニがなぜ美味しいのか?他の産地とどう違うのか?
その秘密をじっくり1時間かけて教えてもらいました。
旨みたっぷりで身入りが安定している流氷海明けの時期(3月下旬から約1カ月ほど)
鮮度が落ちる刺し網ではなく、カゴ漁の一級品限定
旨みをギュッと閉じ込めるブライン急速凍結
エアーブラスト凍結に比べて水分の乾燥も少なく、凍結までの時間も短く品質劣化が少ない。
紋別指定工場にて限定生産
毛蟹の水揚げから高鮮度のまま工場に搬入し、ベテランの職人が手際良く製品化。




続いて【釜茹で】の工程です。専用の大釜を用いて高温で一気に茹で上げます。

茹で上がったら次は【冷却】の工程。真水のタンクにカニを移して荒熱をとります。

続いて、【洗浄】の工程です。





いよいよ最後の急速凍結の工程へ。


なぜ冷却する必要があるかというと、凍る直前まで冷やしこんでおくと、冷凍段階で素早く凍結できるため、細胞が壊れずに品質劣化が少なくなるからです。
緩慢凍結の場合には氷結晶が大きくなり、細胞を破壊し、解凍時にドリップが出てしまいます。
急速凍結の場合は、結晶は多数の微細結晶になり、細胞破壊を起こしにくくなり、解凍時のドリップも少なくなります。
このことから、冷凍工程に入る前の十分な冷やし込み(できるだけ0℃に近づけるのが理想)が重要なのが分かります。
※補足として、今回の冷凍方法がブライン凍結なので、十分に冷やしこんでおかないと塩がカニ身にささって塩辛くなる現象も発生してしまいます。どちらにしても、この基本的な工程が重要なのです。


俗に言う「急速凍結」と言われる凍結方法。凍結庫の中で-35℃~-60℃程度の冷風を食品に直接あてることにより、凍結時間を短縮。冷風が当たり難い部分を少なくするのが今後の課題。対象物が肉厚の食品は芯温までしっかり凍結する際は通常より、若干冷凍時間が長くなってしまう。冷風を強くしたり、冷気の温度を必要以上に下げると、対象物が凍結の際にひび割れ、亀裂が生じる。
塩分濃度を高めた飽和塩水(ブライン溶液)を約-18℃に冷却し、その中に食品を漬けこんで凍結する方法。高濃度溶液は不凍液となる。熱伝導率は空気の20倍なので、エアブラスト凍結よりも短時間で凍結でき品質劣化も少ないが、飽和塩水に直接食品を漬けこむので、食品に溶液が浸透してしまう場合がある。
商品として価値が高いのは「ブライン凍結」です。美味しさ、旨み、蟹の甘みをしっかりと閉じ込めてあるのでとにかく美味しい!ただ、加工工程を間違えると、塩辛くなるなど品質にバラツキがでる場合(特に肩肉や足の先)があります。その場合は塩抜きしなければなりません。
真水に殻ごと10~20分程度浸けて解凍します。それでもまだ塩辛い場合は+5分浸けましょう。




仕事終わりに飲むサッポロ生ビールとつぶ貝。最高ですね~




以前は当店でもネット販売してたんですけど、ここ数年急に品薄になり現在は販売休止してます。

これで明日の早朝、天気が回復して毛ガニ漁に行けると文句なしなんですけどね~

仕方ないので、こうなったら紋別観光でもしましょう!


あちこち観光してたらお腹が空いたので…



もう一日あれば毛ガニ漁に行けたかもしれない…

せっかく北海道にまで来て毛ガニ漁の船に乗らず帰るのは、カニ職人としてのプライドが許しません。
こうなったら意地でも毛ガニ漁に行ってやると心に決めたのです!

いざ、念願の毛ガニ漁へ!

沖まで来ると陸地と違って風が強くて、とにかく予想以上の寒さにビックリします。
風速1mで体感温度が1℃下がるといわれていますので、この日の最低気温が0℃だったので、おそらく体感温度はマイナス5℃以下…。


念願の毛ガニとご対面!

あれっ?っと思うかもしれませんが、カゴに入っている毛ガニの半分くらいは海へ戻します。
脱皮直後の身の詰まり具合の悪いカニだから、漁獲して工場に持って行っても結局製品になりません。
「やっぱり、身入りの悪いカニを漁獲すると市場でのセリ値が下がるからですか?」と聞くと、「キロ当たりのセリ値は品質の良し悪しに関係ない」とのこと。
では、なぜそこまで厳しく検品するのでしょうか?
ましてや、今年は昨年の半分くらいの不漁だそうです。
普通だったら、漁獲量を確保するために選別の基準を甘くしてしまうと思うのですが…。
漁師さんいわく、「この身入りの悪いカニも来年になれば、しっかり身の入った毛ガニに育つし、海の資源は限られているから、乱獲してたら自分たちの仕事もなくなってしまうからね。」




















これからも良質のカニを求めて、店長@田辺の買い付けの旅は続く…
完
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